ゴールに向かう小原さん(右)とペーサー村田諒さん(左) Photo by Takumi Ishiyama

2019年UTMB8位、2022年ハセツネダブル優勝など国内現役トップの走力を持つ小原さんが23時間55分26秒の大会新で個人100マイルを制しました。

コースミスで一度は順位を落とすも、巻き返しての優勝でした。

穏やかな人柄の奥にある強い意志はどこから来ているのか、お話を伺いました。

小原 将寿さん / 所属 Answer4 / 記録 23時間55分26秒

Q. 優勝された気持ちをお聞かせください。

100miles100times ※1でもお話したように、今回の彩の国を走るにあたり、
ともさん(井原知一さん)や、こばさん(小林大允さん)と、「24時間切りをして優勝すること」を約束していました。
僕自身、100mileレースで世界のトップ選手と戦うためにも、この彩の国では最低でも24時間は切れないといけないと考えていました。
そういう事前の状況もあり、また途中ミスコースしてしまい、24時間切りも優勝も危なくなる場面があったことから、
最終的に何とか24時間を切って優勝することが出来たという結果に対しては、
達成感も大きいですが、それ以上に安堵感がものすごく大きいです。

また、South2を8時間半を切って走れた(正確には、ペーサーのりょうくんに引っ張って走らせてもらいましたが)ことは、
100mileの後半で一段階ギアを上げられたという初めての経験だったので、
今後、世界で戦う際に大きな自信につなげられる走りが出来たと思います。

※1 「生涯で100マイルを100本完走」のスローガンを達成すべく走り続ける井原知一さんが配信しているトークメディア

Q. 初めての彩の国大会はいかがでしたか。

色々な方からコースが厳しいという話を聞いていましたが、
実際に走ってみるとものすごく気持ちいいトレイルで、走れる箇所も多くあり、
登りや下りも厳しい傾斜の箇所がいくつかありましたが、長くは続かないので、最初から最後まで越生の自然を満喫して走ることが出来ました。
また、スタッフのみなさんのホスピタリティも素晴らしくて、エイドの度に勇気付けられ元気をもらえて、走り続けることが出来ました。

小林大允さん、内山みちこさんと スタート前の穏やかな様子 photo by Takumi Ishiyama

Q. 試走していないと聞きました。理由は?

今年の最大の目標が、12月にタイで開催されるDoi Inthanonで優勝することです。
Doi Inthanonはタイなので試走は出来ないため、今回の彩の国はそれと出来る限り同じような条件で走ることで、Doi Inthanonの目安に出来るかなと考えまして、敢えて試走はしませんでした。

Q. 走歴を教えてください

学生時代は野球一筋で、社会人になってから、運動不足解消の為に走り始めて(2007年頃)、その後2011年にトレイルランニングに出会って、ハマってしまいました。

Q. 直近半年の月間走行距離

300km程度だと思います。
そんなに多くないですが、その分質を高めるように意識しています。

Q. 目標大会へ向けてトレーニングはどのように組み立てていますか?

明確なセオリーというか、パターンみたいなものはないですが、ザックリ1か月前まで追い込んだトレーニングを行って、レースの2週間前に4時間ほどのポイント練習後は疲労抜きを優先していく・・・
フィジカル面でのトレーニングは、こんな感じで、それに内臓系やメンタル面の調整を行なっています。

Q. 彩の国大会を走るきっかけは?

昨年出場されたともさんとりゅーじーさんから、すごく良いレースだよー!とオススメされたことです。

Q. どのようなレースプランでしたか?

タイム的には7時間以内8時間以内9時間以内。
前半からしっかり飛ばして、中盤に中弛みしないで、後半に追い込むという、要するにスタートからゴールまでずっと走り続けるというシンプルプランでした。

photo by Takumi Ishiyama

Q. 前の夜、朝食の内容

前の夜はニューサンピアのレストランでカレーライス(大盛)を食べました。
当日の朝は、おにぎりとパンとバナナです。
炭水化物祭りです。

Q. コースどうでしたか?

コースの印象としては、終始身体が元気だったこともあり、良い印象しか残ってないです。
瑞々しい木々が茂るトレイルは、とても走りやすくて本当に気持ちが良かったです。
僕が練習の拠点としているハセツネのコースに似ているという話を聞いていましたが、
僕の印象としても、雰囲気や植生などはとても似ていると思いました。
ただ、ハセツネのコースよりも優しさがあるなと感じました。
ハセツネのコースは、岩々しい箇所や木の根が無数に張り巡らされたような箇所などもう少し荒々しいイメージがあるのですが、
この越生のトレイルは、ハセツネのコースよりも走る人に優しい山だなぁ~と思いながら走っていました。

Photo by Takumi Ishiyama

Q. 桂木観音手前でコースミスで順位が落ちました。どのようにして気持ちが切れないようにしましたか?

「やっちまった~!!!」という感じで、正直かなり焦りました。
ただ身体が元気だったこともあり、気持ちが切れるということはなかったです。
(あの時、肉体的にも疲労が大きかったら、気持ちも負の方向に持っていかれたかもしれません)
そして、ニューサンピアに戻ってきたときにサポーターのおっくんや藤原君そしてペーサーのりょうくんが、
「こっからだ!」というテンションで迎えてくれたので、その時に負けられないなと改めて思うことが出来ました。

Q. ニューサンピアでの補給ではどのような事を?

事前の想定だと、パンやカステラなどの固形物を食べる予定だったのですが、
補給がものすごくスムーズにいって、逆に固形物を食べなくてもいけたため、
ニューサンピアでは水分しか取らなかったと思います。

Q. エイド提供品でよかったもの、無かったものありましたか?

びっくりするほど色々なものがありましたね!
食べ物も本当に色々あって、もっといろんなものを食べたかったのですが、
食べなれないものを食べて走りに影響が出てはいけないので、
基本的には普段食べているものだけしか食べないようにしたのですが、
そんな中でも、kinocaでエイドの方がお勧めしてくれたプリンとか、高山不動の肉うどん(肉抜きでいただきました)は、
ものすごく美味しかったです。
また、飲み物もすごく豊富にあって、びっくりしました。
ソーダカルピスとかソルティライチとかは、まだ想像の範囲でしたが、コーヒー牛乳とかトマトジュースとかは、
完全に想定外で、こんなものまであるんだーwwwって感じでした。
ただ唯一なかったのが、僕が愛用しているグリーンダカラ!!
エイドの方にも2回くらい「ダカラはないんですよーw」と言われました。

Q. 眠気ありましたか?

眠気はありませんでした。
僕は、レース中に眠くなったことがないので、今回も同じようにという感じでした。
ただ、インスリンショックのようになってしまったときに、頭がクラクラしてしまったタイミングがあったので、
その際は、ともさんからいただいたカフェインピルを摂取しました。
シャキーン!!となりました。

Q. ゴール後は体育館で横になり、かなり疲れた様子でした。

完全に出し切りました。
トレイルランニングに出会って10年以上経ち、これまで100近いレースに出場してきましたが、
おそらくこんなに最後の最後の一絞りまで出し切れたレースは、今回が初めてだと思います。
正直なところラストの20kmは、走りながら意識がフッと飛んでしまう瞬間が何度かあり、
ゴールしたらぶっ倒れてしまうのではないだろうかと思いながら走っていました。
しかし、そんな走りが出来たからこそ、今回の結果を得られたのだと思います。

Q. トップはメンタルも強く持つ必要があります。どのようにキープされていますか?

やはり、追われる側というのは慣れないと難しいなと思いました。
今回もSouth1は、ちょっと中弛みしてしまった感じがあり、少しペースが落ちてしまったと思います。
ただ、竹寺のエイドで2位の選手(のちのち、西方君だとわかりました)との差が数分しかないことが分かり、
エンジンがかかった感じです。
ただ、エンジンがかかり過ぎてしまったのか、その直後にロストしてしまいました涙

Q. 10年以上トレラン大会で上位をキープされています。モチベーションは何ですか?

まだ達成出来ていないという感覚が、常にあるということかなと思います。
自分がやったことは、すぐに忘れてしまう性格のようで、その瞬間は達成感を感じることをやれたとしても、
3日くらい経つと「あの時、どうしてもっと走れなかっただろう」とか「もっと攻めれたんじゃないだろうか」と思ってしまうんです。
それがモチベーションのキープに役立っているのだと思います。
つまり、ネガティブで根暗ということですかね。

Q. ライフ、ワーク、トレーニング、どのように取り組まれていますか?

何かを何かの言い訳にしないように心掛けています。
「仕事が忙しいから」、「トレーニングで疲れているから」、「子育てが大変だから」
ということを、何に対しても言わないように、また周りからそう思われないようにしたいと思っています。
そう思ってはいますが、そう出来ているかどうかは・・・。

Q. 疲労抜きには何かしていますか?

よく食べ、よく寝るという基本的なことを大切にと思っていますが、
睡眠時間がどうしても短くなってしまうので、睡眠の質を上げるように寝具を良いものを使ったり、
寝る前にスマホを触らず10分ほど本を読んだり、腹式呼吸をして深い眠りが出来るようにしてします。
また、月に1回程度の頻度でトレーナーの先生にマッサージをしていただいて、
疲労の状態を診ていただくようにしています。

Q. 日頃の食事で気をつけていることありますか?

野菜を多く食べることと、脂肪を極力とならないようにすることです。
野菜は元々食べる方ですし、妻が野菜料理を多く作ってくれるので、普通に生活していれば多く摂取出来ています。
それに加えて、最近脂肪が落ちにくいような感覚が出てきたため、
1年前くらいから、牛乳を低脂肪のものに変えたり、毎晩食べているヨーグルトも低脂肪のものにしています。

Q. 次はサロマ100kmと聞きました。こちらも10年以上前から参加されていますね。どのように取り組まれていますか。

地元が北海道の北見市というところで、サロマ(佐呂間)は地元みたいなものなので、
5年ほど前まではずっと出ていましたが、ここ5年ほどは走っていないのです。
サロマに限らずロードのウルトラを5年近く出ていないので、正直走れるかどうか、ちょっと不安です。
でも、自己ベスト(7時間7分)の更新を目指して、
ここからロードのペース走などでスピードを付けて臨みたいと思っています。

Q. ロードとトレイルで走り方は変わりますか?

全然違いますね。
ロードはずっと同じ筋肉で走り続けなくてはいけないので、筋肉の疲労感がかなり大きいです。
ロードの100kmとトレイルの100mileだと、
ロードの100kmの方が、10倍キツくて100倍キライです。

Q. 最近は年間で参加する大会を減らされているのでしょうか?

トレイルランニングを始めた頃は、月1ペースでレースに出ていたので、それと比較すると減っていますね。
ただ、最近は月1ペースでトレーニングでハセツネコースを1周する感じなので、
僕自身の感覚的には月1回レースを走っている感覚なんです。
正直なところ、70kmのレースに出るのと自分で勝手に70km走るのだと、
経済的にも時間的にも自分で勝手にやる方がリーズナブルなので、そっちを選んでしまうという。
おこずかいで走っているサラリーマンランナーなのです。

Q. 直近の目標は?

前述しましたが、タイのDoi Inthanonで優勝することです。
このレースで優勝すれば、ウエスタンステイツの出場資格を得られます。
それが目標です。

Q. 先々の大きな目標は?

もう一度、UTMBの表彰台に立ちます!
次はもっと高い場所に立ちます!!

Q. 彩の国大会にはまた参加したいですか?

また出場したいと思います!
今度はミスコースしません!!w

Q. 来年の参加者に一言アドバイスを

キツイコースなのですが、本当に良いコースなので、
少し心に余裕を持たせて、レースを楽しむことを忘れないようにしてください。
最後まで気を抜く箇所がないレースですが、エイド間は10km程度なので、
次のエイドまで、次のエイドまで・・・と唱えていれば、いつか必ずゴールについていると思います。

Q. 最後に自由に感想をお聞かせください

彩の国という素晴らしいレースを開催いただいたスタッフのみなさんに感謝致します。
とても楽しい100mileでした。ありがとうございました!
また、そのレースで自分自身納得出来る走りが出来たことは、今後の僕の夢や目標に向けて、大きなステップになったと感じています。
40歳を超えた僕にとって、未だ成長の過程であるという手応えは、心の底が沸き立つような感覚です。
この感覚がいつまでもなくならないように、これからも一日一日を大切に、常に過去の自分を超えることを意識してトレーニングに励みたいと思います。
やっぱりトレイルランニングはすごく楽しいです!
100mileはサイコーっす!!
ありがとうございました!!

Photo by Takumi Ishiyama

小原さんの記録

桂木観音手前でコースミス。3位まで順位を落とすもSouth2のkinoca→竹寺区間で再び1位に

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